Netflixで配信中のドイツ製サスペンスドラマ『ザ・トラップ』を観ました。
妹を殺された女性作家が、10年越しに犯人を見つけ、自ら罠を仕掛けて追い詰めるというお話です。
全6話なので比較的観やすく、途中で少々気になるところはあったものの、最後まで面白く観ることができました。
この手のドラマは、犯人が明らかになれば事件解決、という終わり方も多いのですが、『ザ・トラップ』はそう簡単には終わりません。
物語の終盤で浮かび上がる「6回」と「8回」という数字。
一見すると小さな食い違いですが、この2つの数字が、それまで信じていた物語をまったく違うものに変えてしまいます。
そして、最後のセリフを聞いたとき、私は思わず「そういうことだったのか!」と唸ってしまいました。
今回は全6話のあらすじと結末を振り返りながら、あの数字が意味するものと、最後に残された謎について考えてみたいと思います。
※ここから先は最終話までのネタバレを含みます。
『ザ・トラップ』全6話のあらすじ
主人公のリザ・コンラートは、10年前に妹アナが殺害される現場を目撃して以来、自宅に引きこもって暮らしている人気小説家です。
ある日、テレビに映ったジャーナリストのロベルト・レンツェンを見て、リザは衝撃を受けます。
あの男だ。妹を殺したのは、あの男に違いない。
リザは妹の事件を題材にした小説を書き、取材という名目でロベルトを自宅へ呼び寄せようとします。
第1話「怪物」
10年間引きこもっていたリザが、テレビで妹を殺したと思われる男を発見。ロベルトを捕まえるため、自分自身を餌にした危険な計画を立てます。
第2話「小説」
リザは妹の殺人事件をもとに小説を書き始めます。一方、取材相手に選ばれたロベルトもリザの過去を調査。お互いに相手のことを探り始めます。
第3話「トレーニング」
ロベルトとの対決に備え、リザは護身術などのトレーニングを受け、自宅の警備も強化します。しかしロベルトもまた、リザとの対面に向けて準備を進めていました。
第4話「取材」
ついにロベルトがリザの自宅へやって来ます。準備万端だったはずのリザですが、相手も簡単には罠にかかりません。主導権が何度も入れ替わる心理戦が始まります。
第5話「告白」
ロベルトの言葉によって、リザは自分の記憶さえ信用できなくなっていきます。さらに出版社のノーバートが隠していた事実も明らかになり、妹を殺したのは本当にロベルトなのか、疑惑が揺れ動きます。
第6話「真実」
現実と小説の境界が曖昧になるなか、リザは事件の真相に迫ります。ロベルトが妹を刺したことが明らかになりますが、彼の証言によって新たな疑問が生まれます。
妹は8回刺されていた。しかしロベルトが刺したのは6回だったというのです。
『ザ・トラップ』結末ネタバレ|妹アナを殺した犯人は?
結論から言うと、リザが10年間追い続けていたロベルトは、確かに妹アナを刺した犯人でした。
ロベルトとアナには秘密の関係があり、その関係をめぐるトラブルが殺害事件につながっていました。
リザがテレビで見た顔を犯人だと確信したのは、間違いではなかったのです。
ところが、ロベルトは簡単に罪を認めるような男ではありません。
リザの精神状態や記憶の曖昧さにつけ込み、逆に彼女自身が妹を殺したのではないかと思わせようとします。
自分が仕掛けた罠で相手を追い詰めるつもりだったリザが、いつの間にか追い詰められる側になっている。この攻防がなかなか面白い。
そして終盤、ロベルトは自分がアナを刺したことを認めます。
しかし、ここで事件は終わりません。
ロベルトが刺したのは6回。ところがアナの刺し傷は8か所あった。
では、残りの2回は誰が刺したのでしょうか。
この疑問を残したまま、物語は最後の場面へと進んでいきます。
6回と8回の刺し傷を考察|リザも妹を刺していた?
私は、残りの2回を刺したのは姉のリザだったのではないかと思っています。
もちろん、リザが実際に刺す場面が明確に示されたわけではありません。あくまで結末から読み取れる解釈です。
でも、そう考えると、それまでの場面がまったく違って見えてくるのです。
リザは最初から8回だと知っていた
気になるのは、リザが執筆した小説に、妹が8回刺されたことが書かれている点です。
リザはなぜ、刺された回数を知っていたのでしょう。
検視報告などで確認したのかもしれません。そうであれば、8回という数字を知っていたこと自体は不思議ではありません。
しかし、自分が最後の2回を刺したことを覚えていた可能性もある。
ロベルトから6回しか刺していないと聞かされたとき、リザは動揺します。
そして開き直ったように反撃し、灰皿でロベルトを殴って逃げ出す。
もちろん、危険な男から逃げるための行動とも考えられます。
ただ、もし自分が刺したことを覚えていたのなら、あの動揺は何だったのでしょう。
ロベルトが6回という数字を口にしたことで、隠していた事実を突きつけられたのではないか。
そんなふうにも見えてきます。
妹アナは本当に愛すべき存在だったのか
ここで思い出したいのが、姉妹の子ども時代の回想シーンです。
リザが花を摘むと、アナは花がかわいそうだと言って泣き出します。
最初は、なんて繊細で優しい子なんだろうと思わせる場面です。
ところが、その続きの映像を観ると、少々印象が変わってきます。
あれ、この妹、なかなか面倒くさい子だったんじゃないの?
私はそう感じました。
妹の繊細さや言動の裏にある本性に、姉はずっと振り回されていたのかもしれません。
もちろん、厄介な妹だったからといって殺害の動機になるとは限りません。
ただ、姉妹だから必ず仲がよいわけではないし、愛情と憎しみが同時に存在することだってあります。
リザは本当に妹を愛していたのでしょうか。
それとも、妹への複雑な感情をずっと抱えていたのでしょうか。
最後の「心の底から」が怖い
そして、最も印象に残ったのがラストのセリフです。
リザは、自分には3歳年下の妹がいたこと、アナという名前だったこと、そして妹を心の底から愛していたことを語ります。
普通なら、亡くなった妹への深い愛情を感じさせる言葉でしょう。
でも、私はあの「心の底から」という言い方が妙に引っかかりました。
言葉の続きに「憎んでいた」と続いていそうな抑揚でした。
本当に心の底から愛していたのなら、わざわざそこまで言い聞かせる必要があるのだろうか。
もしリザが残りの2回を刺していたとしたら、この言葉は妹への愛情の告白ではなく、自分自身を納得させるための言葉だったのかもしれません。
そして、ロベルトが6回刺したあとにリザが2回刺したのだとすれば、どちらの傷が致命傷だったのかという問題も残ります。
ロベルトが殺人犯であることと、リザも妹の死に関わっていたことは、必ずしも矛盾しないのです。
『ザ・トラップ』感想|罠にかかったのは視聴者だった
このドラマの面白いところは、タイトルの『ザ・トラップ』が一つの罠だけを指していないことです。
まず、リザがロベルトに仕掛けた罠。
妹を殺した男を自宅に呼び寄せ、罪を認めさせようとします。
次に、ロベルトがリザに仕掛けた罠。
リザの記憶を揺さぶり、彼女自身が犯人ではないかと思い込ませようとする。
そして、リザも妹を刺していたという解釈が正しければ、もう一つの罠が見えてきます。
最後に罠にかかっていたのは、私たち視聴者だったのではないか。
私たちは最初からリザを、妹を殺されたかわいそうな姉として見ています。
10年間引きこもり、妹を殺した犯人を追い続けてきた女性。
当然、彼女を応援する側に立ってしまう。
ところが最後になって、そのリザ自身にも疑惑が向けられるのです。
ロベルトが犯人でした!ちゃん。
そんな終わり方を予想していたら、最後にとんでもないものを置いていかれた気分です。
しかもリザは小説家です。
自分の物語を自分で作り上げることができる人間なのです。
ロベルトが妹を刺したのは事実だったとしても、自分が刺した2回については語らなければいい。
そうすれば、彼女はいつまでも妹を殺された悲劇の姉でいられます。
この構造が実に面白いと思いました。
イケメントレーナーは何だったのか問題
さて、ここまで褒めてきましたが、途中で少々ダレる部分もありました。
特に、リザが護身術などのトレーニングを受ける場面です。
10年間引きこもっていた女性が、殺人犯と対決するために身体を鍛える。そこまではわかります。
しかし、わざわざイケメンのトレーナーまで登場させるものだから、こちらとしては何か期待するじゃないですか。
この人、あとで重要な役割を果たすのかな?と思っていたら、特に何もなかった(笑)
あれだけハードなトレーニングをしていたのに、その成果が目立つ場面もあまり印象に残っていません。
イケメントレーナー、鍛えるだけ鍛えて物語から退場――。
何だったんだ、あのイケメンは。
銃の撃ち方を教えたり、隠しカメラを設置する「つて」を持っていたりのシゴデキイケメン。
何か、重要な役割でもあるのか?と期待しましたが、すっかり肩透かしをくらわされてしまった。
トレーナーを雇って身体を鍛えたり、銃の扱いを習ったり、監視カメラを設置したりと、ロベルトと対峙するために用意周到に準備していたリザが、ロベルトを家に招いた際、飲み物を置いたまま部屋を離れるのはどうなんでしょう。
いやいや、そこは警戒しなくては!飲み物の管理はずいぶん無防備で残念でしたね。
こういう気になる場面はありましたが、全体としては楽しめました。
特に、リザとロベルトの立場が何度も入れ替わる心理戦と、最後まで主人公を信用していいのかわからない結末がよかったです。
全6話という長さもちょうどよかったです。
まとめ|最後に残ったのは、リザにとって都合の悪い真実
『ザ・トラップ』は、妹を殺した犯人を捕まえる復讐劇でありながら、最後には主人公自身の罪を疑わせる物語でもありました。
ロベルトが6回刺したという証言と、アナに残された8か所の刺し傷。
残りの2回を刺したのは誰なのか。
リザだったという解釈が正しいのか、作品は明確な答えを示していません。
だからこそ、最後の「心の底から」という言葉が、いつまでも引っかかるのです。
妹を愛していたというのは本当かもしれない。でも、愛していたことが妹を殺さなかった証拠にはならない。
そして、リザが小説家であるという設定も、ここで効いてくるように思います。
彼女は妹を殺した犯人を追い詰めた。
しかし、最後には自分にとって都合の悪い部分だけが残ってしまう。
あの結末を観てから、もう一度最初から観直したくなるドラマでした。


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